【コラム5】これだけは知っておきたい!~トムラウシ山遭難事故~
最近気づいたことは、僕の主食は米でもパンでもなく、「ラーメン」だということ。
1週間に3日はラーメンを食べに行っている気がします。今日も昼はラーメンを食べました・・・(でぶ)。
さてさて、
最近「山の危険性」についてコラムを書いていたからか、山岳遭難の事故をよく目にする気がします。
先日も北アルプスの西穂高岳で滑落した男性が死亡する事故がありました。
https://www.google.co.jp/amp/s/www.sankei.com/region/amp/191103/rgn1911030031-a.html
コラム1では長野県に特化した遭難件数を取り上げましたが、警察庁の統計で、全国的に見ると令和元年の夏の間(7~8月)の遭難件数は、606件もありました。
(コラム1はこちら)
前年平成30年の遭難件数は年間で2,661件にも上り、平成29年と比べて78件も増加しています。
山に登っている以上、遭難はいつ起きておかしくないんですな。
今回は、改めて「山の危険性」をテーマにして、過去に起きた山岳遭難事故を取り上げ、私たちにできることを考えてみたいと思います!
目次
これだけは知っておきたい!トムラウシ山遭難事故
過去に起きた山岳遭難事故の中で最も知られていて最も重大な事故と言えば「トムラウシ山」で起きた遭難事故を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。
この遭難事故では、19名中8名もの方が亡くなっています。
数字だけで考えるとあまりピンとこないかもしれませんが、自分に置き換えるとその恐ろしさがわかります。
もしゴルトラ登山隊のみんなで山を登って、その半分が遭難死してしまったとしたらと考えるだけで恐ろしいです。
どんな事故だったのか?
では「トムラウシ山遭難事故」とはどのような事故だったのでしょうか。
ものすごーく簡単に言うと、悪天候の中登山を行い、低体温症が発症した結果、多数の死者を招いた事故です。
この事故は、夏場に起こりました。
夏場でも低体温症が発生し、死者まで出してしまうということで当時話題を呼んだようです。
(※ググればいろんな人が記事を書いていますし、日本山岳ガイド協会が報告書を出していますので、詳しいことはそちらをご覧いただければと思います。)
事故にあったのは、ツアー参加者とガイド
この事故にあったのは、旅行会社の登山ツアーに参加した方15名と旅行会社のガイド4名(うち1名はシェルパ)の合計19名。
一番若いのは、ガイドの一人で当時32歳で、一番の年配は、ツアー参加者の69歳でした(男性1人、女性1人)。
ツアー参加者は、50代後半から60代がメイン。
みなさん登山経験が豊富で、中には登山歴53年の大ベテランの方もいました。
さらに、ガイドのリーダーも、登山経験が豊富、ガイド歴も長く、海外での登山経験なども豊富な方でした。
一般人から見ると、かなり登山に慣れているメンバーで構成されているパーティーのように思えますね。
事故にあったのは、夏場
この事故は、2009年7月16日に起こりました。
低体温症というと、気温が低い冬場に起こるものだというイメージがありますが、夏場でも起こりうるんだというのが印象的です。
ざっくりとした経過まとめ
ざっくりと経過をまとめます。
※詳細は報告書や他の記事を参考にしてください。
7月13日
新千歳空港に到着。ツアー客は登山用具などを買い足す。15日・16日の天候は荒れるだろうとガイドは予測していた。
宿泊施設で一泊。
7月14日
天候はガスがかかっていたが、予定通り出発。
途中の登山道は身体が持っていかれるくらいの強い風。
旭岳登頂後女性1名が嘔吐。
白雲岳避難小屋で一泊
7月15日
天候は完全な雨。風はない。体感温度もそれほど低くない。
パッキングが悪く、装備の一部を濡らした人もいた。
濡れた雨具や手袋などを乾かそうとしたが、ほとんど乾かなかった。
7月16日
前日の深夜からかなりの強風。
沼の水が氾濫。ガイドが手渡しでメンバーを渡そうとするが、ガイドのうち1名が転倒し、全身をぬらしてしまう。
女性登山客の一人の様子が急変。呼びかけにも反応が薄く、身体を動かそうとしない。
風は一段と強まり、常に強風が吹き荒れる状態(弱くなる瞬間がないほどの強風)。
さらにほかの女性登山客の様子がおかしくなる。腕でも止められないほどの震え。歯ががちがち震える。
他にも猛烈な寒さを感じる登山客が現れる。
進行状況によりパーティが大きく2つに分かれる。
一方のパーティでは、ガイドが低体温症の症状を発症。思考が回らなくなり、呂律も回らなくなる。そのうち、登山道に倒れこんでしまう。
もう一つのパーティでは、登山客数名が死亡。
この日に捜索も開始されるが、悪天候による視界不良で捜索を断念。
7月17日
天気は晴れ。
リーダーのガイドが死亡しているのを別のガイドが発見。
捜索隊が登山道に倒れている複数の遺体を収容。
事故から学ぶ3つのポイント
その1 「ひとまず行ってみよう」という判断を下すなら基準を持つこと!
この事故では、当初から悪天候で、風も雨も強かったそうです。特に何かの判断の根拠があったわけではなく、「ひとまず行ってみる」という考えによって登山ツアーが始まったと報告書にあります。
私たちも登山をしている以上、進むか撤退するか迷うことがあると思います。
そのときに「まず行ってみるか」という判断を下すには、「エスケープルートがあること」、「途中で引き返すポイントを決めておくこと」というような基準を設けておく必要があると思います。
こういった判断基準を持たずに進むと、撤退が遅れ、リスクは時間を追うごとに高くなります。
その2 メンバーでコミュニケーションを取ること!
ツアーには、ガイドが3人同行していました。
しかしながら、この3人は初対面。
さらに、ガイドのうち一人は、トムラウシ山は初めてだったと言います。
報告書には、次のように記載されています。
まとまったパーティにできるか、 〝にわか寄せ集めパーティ〟のまま進むかは、リー ダー次第である。そのためには、ツアーの出発前に まずはスタッフ間で、パーティ運営や安全管理について共通認識を持ち、役割分担を決めて、チームワー クを確立しておくべきである。
この事故では、スタッフの判断ミスや迷いによって対応が後手後手になってしまいました。
報告書や、事故後のガイドや参加者へのインタビュー記事などを読むと、『危険だと思ってたけど言えなかった』といった、コミュニケーション不足が目立ちました。
そういう意味では、最近SNSなどで、登山仲間を募集して即席のグループをつくり、登山をしているケースも見受けられますが、参加する時はしっかりと周りの人たちとコミュニケーションをとって、言うべきことは言う。という姿勢が必要かもしれません。
(とはいえ、あんまり細かいことまで言いすぎると嫌われるので注意しましょう笑)
その3 低体温症について知っておくこと!
そしてなにより、低体温症について知っておくことです。
トムラウシ山遭難事故に参加していた参加者もガイドも、低体温症のことは耳にしていたが、詳しいことは知らなかったということです。
低体温症については、また別の機会に取り上げたいと思いますが、
1 夏場にも起こる
2 山の上では体温が34度を下回ったら死ぬ
3 体温は常に奪われている(風・濡れた衣服・汗などで)
ということを意識するだけでも違うかもしれません。
平均体温が36度だとしたら、2度下がるだけでも死に直結します。
登山をする上で体温を保っておくことはとっても大事なことなんですな。
まとめ
以上偉そうに書いてきましたが、他人のことをとやかく言うのはとっても簡単なことです。
しかし、いざ当事者になったらと考えると…
今回はこのへんで。
バーイ、センキュー!